農薬は、農作物を病害虫や雑草から守り、農作業を軽減してくれる、なくてはならない資材です。効力ばかりでなく、安全性についても多くの試験が必要で、そのデータをもとに安全性が確認されたものだけが登録されています。
農薬取締法
日本では、「農薬取締法」という法律に基づいて農薬全般が動いています。同法によると、農林水産大臣が厚生労働大臣、環境大臣の協力を得て、効果、薬害の有無、毒性、発がん性、催奇形性、残留性など人体、農作物、環境に対する安全性を確保し、農薬の安全かつ適正な使用の確保を図っています。簡単にいうと
- 作物に対する安全
- 使用者に対する安全
- 収穫物に対する安全
- 環境に対する安全
そして、同法では、農業生産の安定と国民の健康の保護を助け、国民の生活環境の保全に貢献すると判断して、公の帳簿に登録したものでなければ、販売することができないと定められています。
この農林水産大臣が「登録したもの」でないものが「無登録農薬」で、品質の保証がなく、農作物だけでなく、使用者や消費者、環境への安全性が確保されていません。
農家は、安全な農産物を国民に安定的に合理的な価格で供給するため、「登録農薬」を適正に使用し、生産者責任を果たしていくことが強く求められています。このことが、産地の発展につながり、産地銘柄を確固たるものにする方策でもあります。
農薬になるのは2万個に1個
研究機関で作られた農薬の候補の化合物は、効果試験、毒性試験など多くの試験を行い、効果と安全性を確認したうえで登録されます。多くの候補化合物が農薬として登録されるまでに脱落し、農薬となるのは、新化合物2万個に1個の割合です。
化合物の合成から登録までには、10年以上の年月と40億円以上の経費がかかります。多数の実験動物を使って安全性を確認しているのです。
安全使用基準
「農薬安全使用基準」は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期などについて、使用者が守るべき基準です。
農薬が残留基準を超えて農産物に残留することのないように決められています。柱になるのは、その農薬を使うことが許される収穫前日数と、それまでに使用できる総使用回数の制限で示されています。使用基準を守り、適切な使用をすれば、農産物を食べる人の安全性は確実に保証されます。
残留農薬基準
中国産の冷凍ホウレンソウ、冷凍塩ゆでエダマメなどから残留農薬が検出され、中には食品衛生法の「残留農薬基準」を超えたものも出現しました。
農産物の安全性が話題になる時、必ずといってよいほど、農薬の残留が取り上げられます。しかし農薬は、毒性や環境中での動きについて解明が進んでいる化学物質であり、残留については日本では十分な対策がとられています。
散布された農薬の大部分は田や畑で分解されてしまいますが、一部は収穫物に残留する場合もあります。消費者は、農産物に残留した農薬の量を知り、自分でコントロールができませんので、残留対策は非常に重要です。
残留対策は、人が生涯にわたって農薬を使用した野菜や果実などを食べ続けても健康になんら影響を受けない水準以下に農薬残留量を抑えるよう農薬の使用条件を定めるという方法で行われています。この水準として、食品衛生法に基づき定められているのが「残留農薬基準」です。
都道府県の保健所や衛生研究所などでは抜き取り検査をしています。年間約40万件の検査で、基準値が設定されているもので基準値を超えた数は100以下です。
登録農薬を正しく使用する
登録農薬は人・作物・環境などへの安全性が証明された農薬です。購入の前に必ずラベルを見て、「農林水産省登録第○○○○号」と記載されているか確認しましょう。
また、登録農薬でも「安全使用基準」を守らなければ、安全性は失われます。ラベルに記載された使用倍率・使用量・使用時期などを確認し、正しく使用しましょう。
そのほか、登録農薬だと思って使用したのが、実は無登録だったというケースもあるようです。最近になって登録が失効した農薬を使用してしまうといったことや、農薬の種類名と商品名を勘違いしてしまうことのないよう、十分注意しましょう。